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RESEARCH

 動物の飼育管理は食糧問題や環境問題,貧困や健康の問題など,私達人間の生活に関わる様々な問題と関係しています。そのため,動物の飼育環境や動物自身のQOL(生活の質)の向上を図ることは、共に生きる私達人間のQOLの向上につながる重要な要素といえます。当研究室では,動物行動学・動物管理学の手法を利用し,そのような動物の飼育管理上の問題の解決やQOLの向上につながるアニマルウェルフェア研究に取り組んでいます。私達の研究室で扱っている研究対象の動物は、主に大型家畜(牛)と展示動物(動物園動物)です。

THEME

画像処理技術を利用した非侵襲的精密行動調査法に関する研究

●赤外線深度センサーを用いた自動行動記録技術の開発

 赤外線深度センサーカメラ(IR depth sensor camera)は従来のビデオカメラのように画像として記録される だけでなく、立体的な形態変化を数値データとして捉えることができることから、近年様々な応用が検討されています。我々の研究室では、この3次元情報を取り扱うことが可能なセンサーカメラを用いて、人間の新たな「目」として、動物の行動反応を簡易かつ高精度にモニタリングするための研究を試みています。

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農学部岡山研究室との共同研究

赤外線深度センサーカメラによりとらえられた牛の立位姿勢データ。上方からの撮影により、欠損している部分もあるが、牛の頭部や背中の形の特徴がよく捉えられている。

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カメラデータは、カメラから対象までの深度(距離)データとして評価することができる。

●2次元・3次元動画解析システムを使用した非侵襲的行動計測

 動物の行動に関する正確なモニタリング方法としては、一般に発信機やGPS、加速度センサーなどが使用されていますが、展示動物においては、その性質上、発信機の装着等ができないといった難点があります。我々は、これらの問題を解消すべく、動画データから動物の正確な位置を演算できる動画解析システムを利用して、対象動物の運動量や利用エリア、個体間の位置関係を分析し、異常行動の影響や飼育環境の嗜好評価、社会関係の評価などを行っています。

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1台のビデオ映像から展示動物における一日の歩行エリアや時間帯による歩行速度の変化が計測可能

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複数台のカメラ映像を組み合わせることから、動物の動きを3次元的にとらえ、様々な角度からの行動評価が可能となります。

展示動物および家畜のアニマルウェルフェアに寄与する動物行動学的研究

●展示動物における運動要求量の解明と常同行動の制御

 一般的に、展示(動物園)動物は、本来の生息地よりも運動が制限された環境で飼育されており、飼育下では十分に運動欲求が満たせていないとされています。これは、ストレス性常同行動(異常行動)の一つであるペーシング(異常往復歩行)などを引き起こす原因とされており、特に食肉目の動物で対策が求められています。例えば、ライオンは1日14~16時間も眠ることから、比較的運動欲求が低いと考えられていますが、我々の研究から、それでも少ない運動機会が制限されると、ストレス行動の出現割合が高くなることが明らかとなりました。この他、クマやオオアリクイにおいても同様な研究を進めております。

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●動物の飼育管理の快適性およびエンリッチメントデバイスの効果に関する研究

 家畜において飼育管理上の快適性は、生産物の質の向上といった観点から非常に重要な要素です。また、展示動物においても、動物園の域外保全機能の向上といった観点から、快適性への配慮は不可欠です。我々の研究室では飼育管理している動物の快適性に及ぼす様々な要因、またそれを達成するための解決策などについて研究しています。また、飼育環境における快適性を向上させるために様々なエンリッチメントデバイスというものが考案されていますが、その効果や実際の動物の嗜好については分からないことが沢山あります。そこで効果的なエンリッチメント対策の実践のため、エンリッチメントデバイスの使用欲求やその機能的役割などについても研究しています。

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●家畜の周産期行動および発情行動に関する研究

 人が飼育している動物においても、親による世話は子どもの健康や発達、仲間との社会関係の構築等において重要な意味があります。我々の研究室では、特にこのような周産期における動物の親子の行動(母子行動・母性行動)や生理的動態(オキシトシン等)に着目して研究を進めています。また、動物の繁殖に関わる重要な反応である発情反応(性行動)にもスポットを当て、行動反応や自律神経反応の変化から、受精適期の解明、簡易判別手法の開発にも取り組んでいます。

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出産後、子牛に驚き、なかなか近づこうとしないネグレクト(育児放棄)牛。最近このような牛が増えてきています。

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牛の微妙な反応の変化から、発情状態の判別ができないか、研究を進めています。

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