ここ数年、牛の親子における人に対する反応の特徴に関する調査を実施してます。人への従順性は馴致やトレーニング以前にどれくらいの個体差があるのか?親子でその性質は似ているのか?などです。今回は、この一連の研究で、遥か北の地、北海道大学の静内研究牧場で調査を実施させていただきました。
北大静内研究牧場は、札幌から離れること120km、北海道の南、新ひだか町静内にある、肉牛(日本短角種)と北海道和種馬の放牧育成を中心にした研究牧場です。馬産地として有名な地域で、近隣にはサラブレッドの牧場もズラリと並んでいます。
調査対象とした日本短角種は、赤い毛をした北東北および北海道を中心として飼育されている和牛の一種で、その数は年々減ってきています。一方で、放牧適性が高いといわれており、放牧での管理が主流となっています。今回の調査では、放牧時ならびに管理作業時の反応についての調査を実施しました。
上の写真ではいろいろな文字が牛の体に書いてあると思いますが、これはそれぞれの個体を遠くから識別したりするために脱色したものです。慣れている家畜とは言っても、人が近づけば観察にもそれなりに影響が出ます。ターゲットとなる牛を少し離れた場所から探したり、空間分布を記録するためにこのようなマーキングを行えるのも家畜での調査の大きなメリットです。マーキングにあたっては、東海大の学生さんや北大の河合先生、研究生の方にもお手伝いいただきました。
また、調査の合間には、道産子にも乗せていただきました。この道産子、直前まで放牧されてます。それを河合先生が呼びに行くと、またたく間に集まってきます!ウマの山地放牧地での放牧を初めてみましたが、いやはや、よく管理されてます。このあと実に20年ぶりくらいで、たっぷり乗せていただくわけですが、ウマから降りると膝が笑いっぱなしでした!でもすごく乗り心地が良くて、楽しかったなぁ。
さて、肝心の調査の方はというと、初日は天候が悪く、予定していた準備が思うように行きませんでしたが、なんとか予定期間内に2つの調査を終了することができました。国内でもこれだけ広大な放牧地と多くの大型家畜を保有する大学はもう殆ど無く、実験動物と入ってもなかなか大規模な実験はできない中、今回は調査にご協力いただけて非常に助かりました。得られたデータから思うような結果が得られるかは、解析してみないとわかりませんが、面白い事実が発見できればと思っています。