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枠を超える

dklabo

 血液は動物の生存にとって重要な役割を果たしており、その成分を詳細に分析することで、たとえば、栄養状態が悪いであるとか、何らかの病気にかかっている、あるいは赤ちゃんができる準備が整っているなど、いろいろなことが分かります。そのため、特に人間と言葉による会話ができない動物達の状態を把握するうえで、血液の検査は強力なツールとなっています。

 そんな中、私たちのプロジェクトでは、JAZAに支援いただき、現在大型のネコ科(ライオンやトラ)を対象として、血液の一般成分とともに血中の「タウリン」という成分が、年間を通じてどのような挙動を示しているのかという調査を行っています。なぜ「タウリン」なのか?実は、飼育下のネコ科の動物では、きちんと監視していないとタウリン欠乏による疾患(心不全・失明など)のリスクがあるからです。人間やその他の多くの動物と異なり、ネコ科の動物は生存に必須のタウリンという成分を体内で合成することができません。そのため、ネコ科の動物は食べ物からタウリンを得るしかありません。野生下では、エサとなる動物が体内で作ったタウリンを摂取することができますが、飼育下では人間が栄養をコントロールしているため、全ての栄養が必ずしも充足していない可能性もあります。しかも、血液検査も大変な猛獣においては、なおさら状態把握は困難です。幸い、かみね動物園では近年トレーニングによって、ライオンやトラの採血ができるようになってきました。そこで、あまりよく知られていない、動物園のライオンやトラのタウリンの挙動を明らかにすることを目的に調査を行っています。

 猛獣の血液が採取できること自体が貴重なことですが、なかなか思い通りにいかないことがあるのも研究の難しいところであり、面白いところ。そこで今回、かみね動物園さんに加えて、採血のトレーニングでこれまでに多くの実績がある、福岡県の大牟田市動物園(http://www.omutazoo.org/)さんにも協力いただいて研究を実施しています。大牟田市動物園さんには、先日訪問させていただいたとき、今回のプロジェクト研究の相談だけでなく、様々な取り組みを丁寧にご紹介いただくなど大変お世話になりましたが、多くの動物園さんに協力いただけることは、研究の発展の観点からも、また学生の学びの観点からも非常にありがたいことだと感じています。このように、プロジェクトをきっかけとして、その枠を超えた様々なつながりを発展させ、新たな学びの輪が広げられるといいなと考えています。

 
 
 

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