先週土曜日は、家畜の放牧及び行動学分野におけるお二人の気鋭の先生をお呼びして、本学の特別プログラムの集中講義を開催いたしました。本講義は農産物総合リスク論といって、食糧生産に関わる諸技術における課題について、自然科学的側面や倫理、社会学的側面から議論するというもので、数年前から学部生を対象に実施している授業です。私のコーディネート回は、数年前学会でも議論になった「放牧=アニマルウェルフェア飼育システムなのか?」というテーマで、毎回講師の先生に話題提供いただいておりました。これは家畜の放牧飼育を考えるうえで重要なテーマで、両極の議論を展開する上で、あえて「アニマルウェルフェア上、放牧は不可欠である!」「放牧はアニマルウェルフェア飼育システムにはならない!」という内容でお話しいただきました。
でも、実際のところ、放牧家畜の研究をバックグラウンドするお二人とも「放牧がアニマルウェルフェアの役には立たない」とも考えておられませんし、かといって「アニマルウェルフェアのためには絶対放牧しなけれればならない」とも考えておられないというところが、本講義のミソで、実はお二人の話の中で共通してお話しいただいていたのは、何でもかんでも放牧ならウェルフェアが保証されるのではなく、きちんとした管理に基づく放牧ならば、家畜をよりよい状態で管理でき、アニマルウェルフェアを向上させるための重要なツールになるというところでした。果たして学生さんたちは気づいていたでしょうか?
畜産的な基礎知識のない学生さんもいて、なかなか講義の進め方も大変だったと思いますが、講師の先生には、非常にわかりやすく、かつ刺激的な指導をしていただきました。学生たちも普段お話を聞けないような先生方に講義いただき、いい刺激になったと思います。最近、外部の先生に来ていただいてお話ししていただくことが難しくなりつつあるのですが、学生のためにも機会があればまた、様々な先生方に講義をお願いしたいと考えています。講師の河合先生、竹田先生、今回はありがとうございました。